
初夏。果物屋やスーパーに並ぶ艶々のサクランボ。さっと水で洗ってガラス鉢に盛るだけでステキな果物。そのまま食べてももちろん美味しいですが、サクランボを見ると、憧れのあのケーキを思い起こします。詩人であるケストナーの処女作「エーミールと探偵たち」に登場する、ホイップクリームてんこもりのサクランボケーキです。
田舎町からおばあちゃんの家に行く列車の中で、大切なお金を盗られてしまった少年エーミール。都会のベルリンっ子たちが仲間になって、知恵をしぼって協力し合い、犯人を捕まえるために奔走する、ハラハラドキドキ、ユーモアたっぷり、愛情たっぷりの大冒険。
物語は、最後にちゃっかり新聞記者として登場する作者のケストナーと一緒に、少年たちがケーキ屋さんに行くことで、幸せな結末へと向かいます。
ケーキ屋に着くと、男の子たちははしゃいだ。ホイップクリームてんこもりのサクランボケーキを食べながら、思いつくままに話をした。
最後に、ケストナーさんが言った。
「きみたちは、ほんとうにたいしたやつらだよ」
そこで、三人は、胸をはりたい気分になって、もうひとつ、ケーキを食べた。
(エーリヒ・ケストナー作「エーミールと探偵たち」
絵本や児童書の中に出てくる食べ物って、どうしてこんなに魅力的なのでしょうか。本当はもっと素朴なケーキなのですが、文章だけを読んだとき、夢のように麗しいケーキを想像してしまいました。ステキな大人が子どもを優しい目線で見守るその様子。今では大人側に感情移入して読んでしまいますが、子どもと大人、どちらの視点から読んでもステキな本であることは間違いありません!
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