5月12日は、ナイチンゲールデー。ナイチンゲールの誕生日にちなみ、「国際看護師の日」「看護の日」に制定されています。ナイチンゲールは、クリミヤ戦争の野戦病院で、負傷兵たちへ献身的な看護を行い、看護の大切さと尊さを世界に浸透させました。
ナイチンゲールは、人をいたわる優しさだけではなく、冷静な観察眼と分析力も有していました。病院の状況、死者の原因に関する統計を集め、分析し、「清潔、衛生的な環境を保つこと」が、死亡率を下げることを発見。兵舎病院の死亡率を、わずか3か月で42%から5%にまで引き下げることに成功しています。
また彼女は、患者のクオリティ・オブ・ライフの向上にも目を向けました。多くの負傷兵がギャンブルやお酒にお金を消費する毎日を送っている状況を憂い、送金システムを整え、家族のもとに送金ができるようにしました。また、読書室を整備し、ノンアルコールの飲み物を出すようにしたことで、患者はアルコールに溺れる代わりに、本を読む環境を得ました。
「天使とは、美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する者のために戦う者なのです」
今まで経験したことのない生活を送らざるを得ない状況に、心が疲弊している人々も多いでしょう。それでもいま、命を守るために、多くの名もなき医療従事者たちが戦ってくれています。
ナイチンゲールは、ランプを掲げて夜回りを欠かさなかったことから、「ランプの貴婦人」と呼ばれ、兵たちから母親のように愛されました。心に小さなランプをかざしましょう。家を清潔に保ち、正しい食生活を心掛けてみませんか。窓を開けて光を浴び、心を落ち着ける温度の飲み物を飲み、そして本を読みませんか。クリミヤの負傷兵たちがそうしたように。
本には、不安をやわらげ、心を救う力があると、わたしたちは心から信じています。
「本は心のご飯です」。心身を健やかに保つためにも、今は心に栄養を蓄えましょう。
「Notes On Nursing(看護覚え書)」はベストセラーとなり、『患者の病状を注意深く観察することの重要性、衛生、温度、新鮮な空気、光、正しい食生活の大切さ』について世界中に広めました。ナイチンゲールの生涯と看護覚え書について、「Dr.コトー診療所」の監修者も務めた現役医師が漫画化したこの本。なんとナイチンゲール博物館にも展示されています。
衛生観念がまだない世の中で、「クリミヤの天使ナイチンゲール」が、戦って、戦って、戦い抜く姿。美しいまでに怜悧で合理主義。今まで知らずに持っていた、ナイチンゲールへのロマンチックな幻想は、大きく音を立てて崩れ去りました。人間ナイチンゲールの、過ちも含めてそのまま描くこの本は、知識を深くすることの驚きと喜びを改めて教えてくれます。