さじなめて 童たのしも 夏氷

いよいよ8月。夏真っ盛りですね。夏の風物詩と言えば、夏祭り、海水浴、花火大会。朝顔、向日葵。金魚すくい、入道雲、スイカ、そしてかき氷と、目にも鮮やかなものが盛りだくさんです。
夏と言えば、その輝きから、思わず昼の太陽を思い描きがちですが、透き通るような朝焼けや、グラデーションに暮れなずむ夕暮れ、青く輝く星空など、魅力的な時間はあちらこちらに散らばっています。
夏だからこそ楽しく色鮮やに感じるものがたくさんあるように、実は、「夏だから読んで欲しい本」もたくさんございます。湯本 香樹実「夏の庭 The Friends」・長野まゆみ「夏至祭」・重松清「季節風 夏」などなど……。
夏の空気や光、濃い闇を感じながら読む夏本は最高です。ほんだらけでは、夏にぴったりの本を多数ご用意しております。この夏は、ぜひほんだらけであなたの「夏本」に出会ってください。

今月のおススメ本:『枕草子/方丈記/徒然草 日本文学全集07』

編者 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集07)』像)  

春はあけぼの~で有名な枕草子ですが、夏の描写も美しい本です。

あてなるもの。――削り氷に甘葛入れて、新しき金鋺に入れたる
(上品なもの。――削った氷に、甘葛でつくった黄金色のシロップをかけ、新しい金属製の小椀によそったもの)

さらりとした描写ですが、とても上品で優美です。
白く薄く重なる氷、とろりと輝く黄金色のシロップ、キンッと手に沁みる金属椀の冷たさ。思わず一口食べてみたくなる情景が思い浮かびます。
現存する最古のかき氷の記述は枕草子と言われており、1000年以上も前の人々が、いまの私たちと同じく、かき氷を楽しんでいたかと思うと、少し不思議な気持ちになりますね。

古典文学と言われると、少し堅苦しいイメージがありますが、そんな時は、現代語の新訳でまずはイメージを掴んでみてはいかがでしょうか。翻訳の酒井順子さんが、「千年前にも「気が合う人」はいるという喜びを、読者の皆様にお届けできればと思います。」と述べている通り、端的で軽やかな描写に、親近感を覚える方も多いのではないかと思います