Le plus important est invisible-大切なものは、目に見えない-

 雨に打たれた彩度の低い風景に、思わずため息をつきそうになる季節です。でも、青空を映す小さなみずたまりや、部屋の中に飾った一輪のバラなど、陰鬱にうつる日常の中にも、「小さな美しさ」は存在しています。
 6月29日は、作者サン=テグジュペリの誕生日にちなみ、『星の王子さま』の日です。原題『Le Petit Prince』(直訳すると「小さな王子」)は、小さな星からやって来た、小さな王子さまの、小さな物語です。星巡りをしながら様々な星で出会う「大きい人(大人)」の論理を、小さな王子さまは、なんだか不思議で滑稽だなあと見つめます。

「地球の人たちって」
「ひとつの庭園に、五千もバラを植えてるよ……それなのに、さがしているものを見つけられない……」
「見つけられないね」
「だけどそれは、たった一輪のバラや、ほんの少しの水の中に、あるのかもしれないよね……」
「ほんとうだね」僕は答えた
王子さまは言い足した。
「でも目では見えないんだ。心でさがさなくちゃ」(『星の王子さま』)

 『Le Petit Prince』は、1943年アメリカで出版されました。原文は、こどもにもわかるような、かんたんでやさしい言葉で書かれています。日本では、1953年に、『星の王子さま』という新しい名前に生まれ変わって出版されました。原文の持つ美しいリズムを活かした名訳は、今も多くの読者に愛され続けています。ただ、初版発売から半世紀以上経ち、「よく知らない言葉や言い回しが多くて……むずかしいなぁ」と感じた「小さな人(こども)」がいたとしても、それは仕方がないことかもしれません。
 2005年に著作権が公有化されてから、30を超える出版社から、たくさんの新訳が発行されました。星の王子さまって、むずかしかったなあという印象を持った「かつてこどもだった大人」のひとがいたら、ぜひもう一度手に取ってみてください。
 いちばん最初の翻訳を再読し、文学性の高い翻訳に酔いしれるもよし。平易でやさしい翻訳で、深い世界に触れるもよし。挿し絵の印象とはまったくちがう、個性的な翻訳を楽しむもよし。もしくは、磨き抜かれた美しい原文にチャレンジして、自分で翻訳してみるもよし。あなたにぴったりの翻訳を探しあてたとき、本当の意味で、やっとあなたは『星の王子さま』と出逢うのかもしれません。
 雨が降る日は、自然と家にいる機会が増えます。そんな時、色々な名作の中から美しいものを探してみませんか。それはあなたにとって、本かもしれないし、映画かもしれません。音楽かもしれないし、ゲームかもしれません。時短ではなく、時産(じさん)という言葉が聞かれるようになりました。この季節が、あなたにとって、豊かな時間を産むものとなりますように……ほんだらけは、心から願っています。

いつか読もう…を今読もう! 日本・世界のベストセラー本コーナー(銅座店

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