ひととせの 暦を奥に まきよせて のこる日数の かずぞすくなき

一年の暦の巻物を奥へと巻き寄せれば、残る日数の数も少ないなあ。(藤原知家 『三百六十首和歌』)

今年も残すところあとわずかとなりました。

というこの実感を、鎌倉時代の歌人も同じように抱いていたのか、と思うと趣深いですね。悠久の時を経ても変わらぬことと、時を経て変わっていくこと。それらの間には、いったいどれだけの違いがあるのでしょうか。

たとえば、「年越しそば」。時代、場所、人によって、その呼び名や意味は変わりますが、その始まりは鎌倉時代半ばと言われています。疫病がはやり、恐ろしいほどの不景気に落ち込んだ博多の承天寺で、貧しい人たちにそば餅をふるまったところ、年明けに博多港に中国船が三艘もやってきて、街はにわかに活気を取り戻した……。以来、そば餅をふるまってくれた人に感謝し、食べることによって運がひらける「運そば」として大晦日に食べるようになったという説。それから全国に広まり、「細くて長い蕎麦は寿命を延ばす」「体内を綺麗にして新しい年を迎える」「他の麺類に比べて切れやすいことから、1年間の苦労や借金を切り捨てる」「練り蕎麦を、金銀細工の金粉を集めたり、金箔の台を拭ったりするときに用いることから、『金を集める』『金を延ばす(蓄財)』」など、人、場所、文化の違いで、様々な意味を持つようになりました。

あなたの住む土地の、年越しそばは、どの時間帯に食べますか?具材はなんですか?そもそも、年越しそばは食べますか?(年越し「うどん」の地域もあるとか……) 様子は様々変わっても、そこには変わらぬ「感謝」「願い」「祈り」が込められています。

わたしたちが感じている「ふつうのこと」は、実は様々な歴史が積み重なって出来ています。テレビやSNSで興味をもった出来事は、そのまま流してしまうのではなく、「本」を読み、情報を掘り下げ、源流をさかのぼってみてはいかがでしょうか。きっとそこには、今まで以上に豊かで美しい世界が広がっていることでしょう。

ほんだらけでは、『本は心のごはんです』をモットーに、本のソムリエが、心を込めて本をご紹介しています。あなたが見つめる世界を豊かで美しいものにするお手伝いをさせてください。本年は大変お世話になりました。どうぞよい年をお迎えください。

☆冬の早得情報☆

読み終わった本は是非、ほんだらけにお持ち下さい。新しい年をはじめるにあたり、蔵書の整理をいたしませんか? 年末年始間際になりますと、本を売りに来られる方が急増し、沢山の本が入荷します。お値段は在庫数によって変動しますので、お早目にご来店頂いた方が金額UPの可能性大です。ぜひお早めにお持ちください。